レジリエンス
~折れない心を手に入れよう

レジリエンス(resilience)とは、逆境や困難など強いストレスに直面した際の「ストレス耐性」「抵抗力」「逆境力」「折れない心」などといった意味で使われている言葉です。

それは、「決して曲がらない鋼(はがね)のような強さ」ではなく、「竹のように曲がってもすぐ戻るしなやかな抵抗力」であり、「失敗や挫折をしても、それを糧に成長する回復力」のことを指しています。

不確実な時代に生きる私たちは、繰り返し災害や経済危機などの環境変化に見舞われています。そして、それはこれから先も何度も経験することになるでしょう。
そんな時代だからこそ、様々な変化や困難に柔軟に対応し、成長につなげていく力として、個人だけでなく、企業や、国家レベルでもレジリエンスは注目を集めています。

欧米では、学歴やスキルよりも「レジリエンス」を重視して採用するという企業もあると言われるほどです。

これより先、さらに「個人レベルでのレジリエンス」について書いていきます。

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目次

アニメの主人公のレジリエンス

多くのアニメは困難な状況に立ち向かう主人公が描かれています。
困難な状況に一度は諦めかけるも・・・それでも大切な人を守るために立ち上がり、努力と工夫を凝らして逆境に立ち向かっていく。
そんな姿を見て我々は引き込まれるわけです。

ワンピースのルフィも、ドラゴンボールの孫悟空も、多くのアニメや映画にその構図は見られます。
彼らはまさに高いレジリエンスを持っていると言って良いでしょう。

最近では、ルフィや悟空のような特殊能力を持っていない、ごく普通の人である主人公が何らかの事件に巻き込まれ、もがきながらもその逆境に立ち向かい、その過程で成長していく物語というのもよく描かれています。
例えばスタジオジブリの「千と千尋の神隠し」などもそうでしょう。

主人公の千尋のレジリエンスは最初はものすごく低いですが、物語が終わる頃には成長して非常に高いレジリエンスを発揮するようになっています。

レジリエンスの高い人と低い人

さて、現実に目を戻すと、ある状況下ですぐ心が折れてしまう人がいる一方、困難を乗り越える折れない心を持っている人もいるように、レジリエンスの強さには個人差があります。

レジリエンスに関する実験を行ったあるテレビ番組では、けん玉を使った課題に対して黙々と挑戦し続ける人とすぐに諦めてしまう人がいることを検証。
そして、前者をレジリエンスが強い人、後者をレジリエンスが弱い人として、それぞれに特徴的な傾向が見られたと紹介しています。

レジリエンスの弱い人は早い段階で「これは無理だ」「自分には向いていない」と諦めていたり、1回1回けん玉をやるごとにその結果に一喜一憂する感情の起伏が激しい(いちいちリアクションしていては長持ちしない)傾向があったといいます。

一方、レジリエンスが高い人たちは、失敗を繰り返す中でも少しずつ自分の成長を感じ、「いつかできるだろう」という気持ちを持っていたことがわかりました。

この結果などから、レジリエンスの要素として次のことが大事だと明らかになってきました。

つまり、そういう「心の持ちよう」がレジリエンスだということが、研究の中でだんだんと明らかにされてきたわけです。

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ハワイでの実験

もう一つ、ワイで行われたある調査もレジリエンスを考える上で一つのヒントになります。 その調査とは、貧困、暴力、死別など不安定な家庭環境に産まれた子供たち約700人に対し、1歳から40歳になるまで行われた追跡調査です。

このような逆境といえる環境で育った子供は、精神疾患やアルコールやドラッグ、犯罪などの問題を抱える大人に育ちやすいであろうということは何となくに想像できると思います。

実際、この中の3分の2の子供たちは何かしら問題を抱えた大人に成長したようですが、残りの3分の1の子供たちは社会に適応した健全な大人に成長したそうです。

同じ逆境の中で育った子供たちでも、問題を抱えた子供と健全に成長した子供がいた。
ここで両者を分けたものはなんだったのでしょうか?

調べてみると、健全に育った子供たちにはある共通点があったそうです。
それが「レジリエンス」だったというわけです。

具体的には、逆境に負けず健全に育った彼らは「前向きで建設的な気質を身につけていた」こと。
さらにいうと「自分の運命は自分で切り開くという信念を持っていた」ということになります。

そして、その気質を備えるために役立ったと思われるのが、「成長のプロセスで少なくとも一人は信頼できる大人との絆があったこと」
祖父母や親戚などの少なくとも1人と強い絆を持ち、規律正しい生活を送っていた。
また、地域の尊敬できる先生や牧師などから感情的なサポートを得る機会に恵まれたことがわかっています。

ここからわかることは、レジリエンスがあれば逆境でも跳ね返すことができること、またレジリエンスは生まれ持った気質でなく、成長の過程で身につけることが可能だということです。

先ほど、「レジリエンス」を構成する要素として、「感情の安定」「自尊感情」「自己効力感」「楽観性」が大事だと書きました。
そして、それらを育むためには「自分を信じて応援してくれる人との繋がり」が大事だということもこのことわかります。

レジリエンスを身につけるには

さて、もう一度「千と千尋の神隠し」の話に戻ります。主人公の千尋が「レジリエンス」を獲得していった過程を振り返って見ましょう。

はじめは何もできないただの少女だった千尋は、湯屋での経験を通じてレジリエンスを高め、適応力や忍耐力を発揮していくようになるわけです。

千尋のレジリエンス獲得への道は、湯婆婆に千尋から「千」という名前にされてしまう所から始まります。
ここで名前を奪われると同時に「何事にも悲観的でやる前から諦めていたこれまでの自分」(けん玉の実験にあった通りレジリエンスが低い人の特徴)も奪われたと考えられます。

その上で、「ハク」との出会いがありました。自分を信じ支えてくれる人との出会いです。

また、ボイラー焚きの釜爺に励まされながら徐々に仕事場で本領を発揮、さらに川の主の傷を治したり、カオナシの世話をすることなどで「自己肯定感や自尊感情」が育まれていったわけです。

千尋が成長して行く過程には、レジリエンスを高める要素がしっかり詰まっていました。

レジリエンスの正体は心構えであり、それを身につけるためには、実際に逆境を経験して、それを乗り越えていくしかありません。

いかなる教育も逆境に及ぶものはない。
(ベンジャミン・ディズレーリ)

最後に

逆境にあっても折れることなく、それを糧にしなやかに成長して行く「レジリエンス」についてどう感じたでしょうか?

きっと自分もレジリエンスを高めたいと思ったのではないでしょうか。

レジリエンスはその気になればいつでも高めることができます。その正体は、ちょっとした心構えの違いだからです。

まずは身の回りの小さな逆境に対しての自分の「心構え」を変えてみることから始めてみてはいかがでしょうか。

尊敬すべき幸福な人は、逆境にいても、つまらぬことはくよくよせず、心配しても始まらないことは心配せず、自分の力のないことは天に任せて、自分の心がけをよくし、根本から再生の努力をする人である。
(武者小路実篤『幸福について』)

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