心の栄養「ストローク」とは?

心理学に『ストローク』という言葉があります。

もともとは「撫でる」とか「さする」という意味の言葉ですが、心理学的な「ストローク」とは、言語・非言語全て含めて「存在を認める行為」のことを指します。

例えば、次のようなことです。 

朝起きて「おはよう」とあいさつすると、相手も笑顔で「おはよう。今日はいい天気ね」と返してくれる。

小さな子供が泣いていたら、ぎゅっと抱きしめて体をさすってあげる。

頑張って働いている姿を見て、そっとコーヒーを差し入れる。

日常の何気ない交流の一コマですが、どれも肯定的な心の交流がなされています。
地味ですが、こうした何気ない交流によって私たちは「自分の存在が認められているのだ」と感じ、心の栄養を補給することができるのです。

こうした心の栄養のことを心理学では「ストローク」と呼びます。

肉体的な成長や健康のためには、ビタミンやたんぱく質といった栄養が必要です。
同じように、心の健全な成長や健康のためにはストローク(心の栄養)が必要なのです。

ハッキリ言って、「私たちはストロークがなければ生きていけない」と言っても過言ではないほど大切なものです。

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目次

スーザン

ストロークが極端に欠乏したために発達障害を起こした実際の話が、「セカンド・チャンス」という記録映画として残されています。

スーザン(1歳10ヶ月)が病院に連れてこられた時、体重は6.75kg、身長も71cmしかなく(平均的な10ヶ月児と同程度)、歩くこともハイハイすることも、喋ることも全くできなかったといいます。

調べた結果、その原因は両親からほとんど面倒を見てもらっていなかったことによるストロークの欠乏だと病院は判断しました。
そこで、病院の医師や看護師は、抱いたりあやしたり、肉体的、心理的にストロークを与え続けました。

その結果、2ヶ月後には体重は2.7kg、身長は5cmも伸びた上に、情緒的な発達も見られるようになったといいます。
それから数週間後、スーザンが一人で病院の廊下を歩き出すところで映画は終わりになります。

このことは、私たちが生きていく上で、いかにストロークを必要としているのかを物語っていると言えるでしょう。

特に子供にとっては生死に関わるほど必要なものだということがわかります。

ストロークの種類

ストロークは、「肯定的・否定的」「言語・非言語」「条件付き・無条件」の3点で分類することができます。

【肯定的】
言語:褒める、あいさつ、ねぎらう…
非言語:撫でる、ハグする、握手する…
条件付き:成果報酬…
無条件:何があっても信じる…

【否定的】
言語:悪口、嘲笑、皮肉…
非言語:殴る、無視する…
条件付き:これができない子はうちの子じゃない…
無条件:あなたの存在が迷惑…

肯定的か否定的かは受け取る側がどう感じるか次第なので、表面的な言動や行動だけでは判断できません。

例えば、「あなたのことが心配なの」と言われたとしても、心から言っているのか、口先だけなのか、あるいはそれによって何かの利益を得ようという計算で言っているのかによって、受け取る側がどう感じるかは全く変わってくるはずです。

ストロークはむしろ、言葉や行動の奥にあるものから受け取るものです。

その言動が「愛」や「信頼」の気持ちから発せられたものなのか、それとも「恐れ」や「利己心」から発せられたものなのか、どちらなのかということです。

口は悪いけれど愛情深い人もいれば、口ではキレイなことばかり言うけれど心が感じられない人もいるはずです。

ストローク不足になると

私たちは肯定的なストロークが得られない状態に追い込まれると、否定的なストロークでも構わないから引き出そうとします。

無視され何もない(存在を認められない)より、否定的であっても何かある(存在が認められる)方がまだマシだと考えるからです。

わざわざ人から嫌がられるような行為をする人の裏には、スロトークの欠乏が潜んでいるのかもしれません。

そうすることで不器用にストロークの欠乏を埋めようとしているのです。

ただし、そうして否定的なストロークばかり受け取っていると、結局自分も他人も愛せなくなり、不信感と疑心暗鬼で心が一杯になってしまいます。

結果的に、無気力になったり攻撃的になったり、ということに繋がってしまいます。

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誰とどんなストローク交換をしているか 

両親、パートナー、友人、同僚、上司、部下などと、最近どんなストロークの交換をしているでしょうか。
振り返ってみると、ストロークのやり取りが少なかったり、否定的なやり取りばかりということはないでしょうか。

そうした身近な人たちとのストロークのやりとりこそ大事にしなくてはなりません。
身近であるほど触れる回数が多いからです。

できる限り、肯定的なストロークのやり取りができるように心を配っていきましょう。

人は、肯定的なストロークを受け取れば、同じように肯定的なストロークを返そうとします。

同じように、否定的なストロークを受け取れば、否定的なストロークを返そうとします。つまりストロークは連鎖し、増大していくものです。

その人に会うと幸福を感じ、自分が肯定的になったような気がする人がいたら、肯定的なストロークを受け取っている証拠です。
なるべくその人と一緒にいる時間を増やしていきましょう。
逆に、自分を否定的な気分にさせる人との時間はできるだけ減らすことも心がけましょう。

自分がどれだけ肯定的なストロークをやり取りしたいと考えても、否定的なストロークばかりを投げかけてくる人もいるからです。

ただし、肯定的なストロークは常に自分から始められることは忘れずにおきましょう。

私たちが触れ合うわけ

私たちがそもそも人と触れ合うのは、楽しみたいから、たわむれたいから、分かち合いたいからであって、ただ自分の怒りや虚しさ、利己心をぶつけるためではないはずです。

私たちが欲して止まないものが、心の栄養「ストローク」です。

我々はストロークについて無自覚になりすぎたのかもしれません。ストロークについて学びなおす必要があるかもしれません。

たとえどれだけ大金持ちになっても、どれだけ人気スターになっても、心の交流、つまり肯定的なストロークが欠乏していたら幸せを感じることはできないのです。

心の栄養はお金や名声では買えないものですから。

まとめ

『ストローク』とは、言語・非言語全て含めて「相手の存在を認める行為」のことを指しました。

ストロークは何気ない日常の中で交わされる肯定的な心の交流であり、私たちはそうした交流から心の栄養を補給します。

これは、私たち人間が生きていく上でとっても大切なものなのです。


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