私たちを影で操る脳内の「報酬系」とは?

報酬系(ほうしゅうけい)とは、何か心地よいことが起きた時に活性化し、人間や動物に「快感」を感じさせる脳内システムのこと。

例えば、何かを達成した時、誰かに褒められた時、大好きなチョコレートを食べた時、私たちは「嬉しい」とか「心地よい」と感じます。

その時、脳内では快楽物質であるドーパミンが分泌されていて、それが人に快楽を感じさせています。

── このシステムのことを「報酬系」といいます。 

この報酬系の快感が、人間や動物にとって大きな行動の動機となるのです。

ハッキリ言って、この報酬系のシステムが私たちを動かしていると言っても過言ではありません。

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目次

報酬系が働くとき

さて、この報酬系が働くのはどんなときでしょうか? 

もともと報酬系は、生きていくために必要なものを得たとき、種の保存に繋がるとき、に活性化するようにプログラムされています。

簡単にいうと「食べること」「セックスすること」です。

そこに「快感」を感じるように脳にプログラムされていて、その快楽を求めて行動している。
そのプログラムのおかげで、人間も動物も地球上で何万年もこうして生き残って来たわけです。

ただし、人間だけは他の動物と少し違っています。

人間だけは、「誰かに褒められたとき」「美しい景色を見たとき」「自分の成長を実感したとき」「ボランティアで貢献できたとき」など、より高次な出来事に対しても報酬系が活性化します。

人間の報酬系を活性化させる3つのタイプ

人間の報酬系が活性化するパターンをいくつかに分類すると次のように、 大きく「動物的報酬」「人間的報酬」「短期的報酬」の3つに分けられます。 

1)動物的報酬
・肉体的報酬 … 食べる、セックスするなど。より本能的なものに近い。

2)人間的報酬
・物理的報酬 … お金や物など何かを獲得した時に感じるもの。
・達成報酬 … 仕事やミッションを達成した時に感じるもの。
・感覚的報酬 … 美的感動・知的好奇心などが刺激された時に感じるもの。
・社会的報酬 … 人に褒められたり、自分が特別な存在だと感じた時などに感じるもの。
・ビジョン報酬 … 夢や理想を思い描いた時などに感じるもの。実際に手にしていなくても、それを思い描くだけで報酬系を働かせることができる。

3)短期的報酬
・摂取報酬 … アルコール、タバコ、薬物などの摂取によるもの。
・バーチャル的報酬 … ゲーム、スマホ、ギャンブルなど。

薬物、ギャンブルなどの報酬系は脳を壊す

注意が必要なのは最後の短期的報酬。
簡単に快感を味わえ、依存的になりやすいからです。

怖いことに、この短期的で簡単に得られる報酬ばかり得ていると、それが癖になってしまい脳内の報酬系システムもそれに合わせて変化してしまいます。

つまり、将来の夢や長期的な計画に向かってコツコツ努力するといった長期的な報酬を待つことができなくなり、ゲームやギャンブルなど報酬系を激しく刺激するものと比べ低刺激な報酬では満足できなくなってしまうのです。

そうなると、すぐに得られる快感ばかり求めるようになり、真面目にコツコツやるのがバカらしくなってしまいます。

しかし、現実は得てして地味なことの積み重ねですから、そうなると現実の生活にも支障が出てきてしまいます。

ゲームやギャンブル、アルコールや薬物などにのめり込んで生活を壊してしまう人がいるのは、そんな脳内報酬系の異常が原因というわけです。

報酬系を活用した動機付けの方法

少し極端な例も紹介しましたが、甘いものがやめられないのも、タバコがやめられないのも、スマホが手放せないのも、全てはそこに報酬系のシステムが働いているからです。

その行為に何かしらの快感を感じているから行動してしまうわけです。

ただし、この報酬系の仕組みを理解して、うまく活用できるようになると、自分や他人を望ましい方向に動機付けることができるようになります。

「子供は褒めて伸ばそう」などというのは、まさにこの報酬系の仕組みを利用したものです。
子供をうまく褒めてあげることができれば、子供はそれを「快」と感じて「よし、もっとやってみよう」と意欲が湧くわけです。

もちろん、それは大人でも同じこと。
誰も褒めてくれないというのなら、自分でやるしかありません。

自分に小さな報酬を与えるようにするのです。
例えば、何かしらの仕事のタスクを終えた時に甘いものを食べる。あるいは、小さくガッツポーズをつくって「自分最高!」などと褒めてあげる。

それだけでも十分効果的です。

1日の仕事を終えた後の1杯のビールもまさにこれと同じ効果があるでしょう。 (もちろん、飲み過ぎたり、自分の中で仕事とビールとの関係性が崩れたら、その効果もなくなってしまいます)

報酬系の仕組みを知らずにそれに踊らされるか、それをうまく活用して自分や他人を好ましい方向に動機づけるか、それは紙一重ですがとても大きな違いを生み出すことになるのです。


カテゴリ モチベーション理論
 タグ  脳科学

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