金子みすずの詩


金子みすゞ
(画像引用)Wikipedia

わたしと小鳥と鈴と

「わたしが両手をひろげても、 お空はちっとも飛べないが、 飛べる小鳥はわたしのように、 地面(じべた)をはやくは走れない。

わたしがからだをゆすっても、 きれいな音は出ないけど、 あの鳴る鈴はわたしのように、 たくさんなうたは知らないよ。

鈴と、小鳥と、それからわたし、 みんなちがって、みんないい。」

金子みすず(大正時代末期から昭和時代初期にかけて活躍した日本の童謡詩人)
1903年4月11日-1930年3月10日。山口の生まれ。10代半ばから詩を作り、同県下関市に移り住んだ20歳ごろから雑誌に詩を投稿するようになる。26歳で自ら命を絶った。代表作は「私と小鳥と鈴と」「大漁」「こだまでしょうか」など。
自然とともに生き、小さな命を慈しむ思い、命なきものへの優しいまなざしが、金子みすゞの詩集の原点と言われる。


みんなちがって、みんないい ── 本当は当たり前のことなのに、一つの基準で全ての価値を決めてしまいがちな現代においてこの言葉は人々の心に鋭く優しく響きます。

きっと、この言葉に救われる人も多いことでしょう。

価値や基準は一つではないのだ、たとえ一つの基準で劣っていても、私の価値は失われないのだ、と思い出させてくれる言葉です。


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その他の金子みすずの詩

こだまでしょうか

「遊ぼう」っていうと 「遊ぼう」っていう。

「ばか」っていうと 「ばか」っていう。

「もう遊ばない」っていうと 「遊ばない」っていう。

そうして、あとで さみしくなって、
「ごめんね」っていうと 「ごめんね」っていう。 

こだまでしょうか、 いいえ、誰でも。

 

大漁

朝焼け小焼だ、 大漁だ
大羽鰮(おおばいわし)の 大漁だ。

浜は祭りの ようだけど、

海のなかでは 何万の、
鰮(いわし)のとむらい するだろう。

 

明るい方へ

明るい方へ 明るい方へ
一つの葉でも 陽のもるとこへ
やぶかげの草は。

明るい方へ 明るい方へ
はねはこげよと 灯のあるとこへ
夜とぶ虫は。

明るい方へ 明るい方へ
一分もひろく 日のさすとこへ
都会(まち)に住む子らは。

 

いぬ

うちのだりあのさいた日に、 酒屋のクロは死にました。

おもてであそぶわたしらを、 いつでも、おこるおばさんが、
おろおろないておりました。

その日、学校(がっこ)でそのことを、
おもしろそうに 話してて、
ふっとさみしくなりました。

 

なかなおり

げんげのあぜみち、春がすみ、
むこうにあの子が立っていた。

あの子はげんげを持っていた、
わたしも、げんげをつんでいた。

あの子がわらう、と、気がつけば、
わたしも知らずにわらってた。

げんげのあぜみち、春がすみ、
ピイチクひばりがないていた。

 

 

みんなをすきに

わたしはすきになりたいな、
何でもかんでもみいんな。

ねぎも、トマトも、おさかなも、
のこらずすきになりたいな。

うちのおかずは、みいんな、
かあさまがおつくりになったもの。

わたしはすきになりたいな、
だれでもかれでもみいんな。

お医者さんでも、からすでも、
のこらずすきになりたいな。

世界のものはみィんな、
神さまがおつくりになったもの。

 

不思議

私は不思議でたまらない、黒い雲からふる雨が、銀に光っていることが。

私は不思議でたまらない、青い桑の葉食べている、蚕(カイコ)が白くなることが。

私は不思議でたまらない、たれもいじらぬ夕顔が、ひとりでぱらりと開くのが。

私は不思議でたまらない、誰にきいても笑ってて、あたりまえだ、ということが。

 

蓮(はす)と鶏(にわとり)

泥のなかから 蓮(はす)が咲く。
それをするのは 蓮(はす)じゃない。

卵のなかから 鶏(とり)がでる。
それをするのは 鶏(とり)じゃない。

それに私は 気がついた。
それも私の せいじゃない。

 

草の名

人の知ってる草の名は、 私はちっとも知らないの。

人の知らない草の名を、 私はいくつも知ってるの。

それは私がつけたのよ、 好きな草には好きな名を。

人の知ってる草の名も、 どうせ誰かがつけたのよ。

ほんとの名まえをしってるは、 空のお日さまばかりなの。
だから私はよんでるの、 私ばかりでよんでるの。

 

蜂と神さま

蜂はお花のなかに、 お花はお庭のなかに、 お庭は土塀のなかに、 土塀は町のなかに、 町は日本のなかに、 日本は世界のなかに、 世界は神さまのなかに。

そうして、そうして、神さまは、 小ちゃな蜂のなかに。

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カテゴリ 心に響く名言
 タグ  価値観

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