「ペスト」カミュに学ぶ、不条理との向き合い方

アルベール・カミュの『ペスト』(1947年)は、「不条理」を描いた小説として読み継がれている名著です。

繰り返される戦争や災害など、私たち人間は「不条理」を避けて生きることができません。望まなくとも否応なく巻き込まれてしまいます。

そんな時、私たちは「不条理とどう向き合い、その中でどう生きていくのか」を問われることになります。

カミュの「ペスト」は、そんな「不条理」の中での生き方について、私たちに多くのヒントを与えてくれます。

(※この記事は、新型コロナウィルスで世界各地で都市封鎖が起こっている2020年3月22日に書いています。)

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「ペスト」あらすじ

舞台は、突如ペストの猛威にさらされた北アフリカのオランという町。始まりはネズミの不審な大量死。その後人間にも感染が広がっていく。

医師リウーはこれがペストによるものだと確信する。しかし、それを訴えるものの行政は真剣に受け取ってくれない。後手に回り続ける行政の対応の中で感染は拡大。オラン市は感染拡大阻止のため封鎖されることに。

そんな中、混乱する市民に対して神父のパヌルーは「ペストは神からの罰である」と説く。

また、新聞記者のランベールは、パリにいる妻のもとへ戻ろうと、裏社会を利用してオランからの脱出を計画。

コタールという犯罪歴のある人物は、それまで苦しんでいた逮捕される恐怖から解放され、恐怖に苦しんでいるのは自分だけではないことにどこか安堵していた。

町の閉鎖が続く中、ペストに感染した幼い子供が苦しみながら死んでいく姿を見た神父パヌルーは、なんの罪もない子供が犠牲になっている現状にショックを受ける。
そして「ペストは神からの罰である」という持論を撤回し、宗教者は信仰を捨てるか、自分に降りかかる全てを受け入れるかを決めなければならないと説くようになる。

その後、パヌルー神父もまたペストのような症状に侵されるが、医師の診察を拒み、神の手に自分の運命のすべてをゆだね、息を引き取る。

医師リウーやその友人タルー、役人グランは保健隊を結成し、ペストの脅威の中で抵抗を続けていた。
彼らの姿を見て、新聞記者ランベールは脱出を断念し彼らと連帯するようになる。

発生から9ヶ月、ペストは沈静化し始める。 しかし、それまで医師リウーとともに奔走してきたタルーがペストに感染。「今こそすべてはよいのだ」という言葉を遺し死亡する。

追い討ちをかけるように、離れていた妻の悲報がリウーのもとに届く。 度重なる「不条理」の中でもなお、リウーは後世のためにこれら全ての記録を残しておこうと決意する。

不条理とどう向き合うか?

不条理に巻き込まれた時、あなたはそれとどう向き合い、その中でどう生きていきますか?

── カミュの「ペスト」は、私たちにそんな問いを投げかけてきているかのようです。

伝染病に限らず、戦争や災害をはじめ、事故や病気、生まれ持った境遇など、私たちは誰もが何かしらの不条理の中で生きていると言っても過言ではありません。

そんな不条理とどう向き合い、どう生きるのか ── ?

それを考えることは、自分の人生をどう生きるのか考えることと同じです。

「誠実さ」と「連帯」

「ペスト」の物語には様々な人物が登場します。

あらがいようのない不条理の中で、いつの時代でも多くの人々はまずはこうした反応を示すのでしょう。

現実から逃れたい一心で無関心になったり、自分や家族の身を守りたい一心で自己中心的な行動をするようになったり、中には宗教にのめり込んでいく人もいるでしょう。

そんな中で、主人公の医師リウーたちのとる行動と態度はとても印象的です。 (これが、著者であるカミュがこの小説の中で最も訴えかけたいポイントなんだと思います。)

キーワードは、「誠実さ」「連帯」です。

不条理に立ち向かうのは、神でもなく、特別なヒーローでもなく、いたって普通の人々のささやかな誠実さと連帯であるとカミュは言いたいのだと思います。

主人公の医師リウーのこんなセリフがあります。

「今度のことは、ヒロイズムなどという問題じゃないんです。これは誠実さの問題なんです。こんな考え方はあるいは笑われるかもしれませんが、しかしペストと戦う唯一 の方法は、誠実さということです。僕の場合には、つまり自分の職務を果すことだと心得ています。」

不条理の中では、マスコミはすぐに悪人を仕立て上げ、巨悪に立ち向かうヒーローを作り出すかもしれません。 宗教家は救済を求める人々に「神の手に全ての運命を委ねる」よう説くかもしれません。

不条理という正解のない状況下では、私たちはどうしてもそうした感情的、感動的、または神聖な物語に魅力を感じてしまいます。

しかし、実際にペストに抵抗するのは、決してそんな大げさなものではなく、普通の人々のささやかで誠実な仕事の積み重ねであるわけです。

強い信念と心の成熟

誠実さのもとに、自分が為すべきことを為す── 物語に登場する人々のそんな姿勢には強い感銘を覚えます。

決して自暴自棄にならず、誰かを憎むこともなく、自分の人生に誠実に向き合い行動する姿こそ、私たちのあるべき理想の姿なんだと思います。

しかしそれは、誠実であるためにあえて中途半端な立ち位置にとどまるという難しい作業を自分に強いることでもあります。

悪に戦いを挑むヒーローになるでもなく、神に身を委ねる聖職者になるでもなく、単純な正義感を振りかざすわけでもないのです……。

敵を作ったり、何かに身を委ねる方が圧倒的に楽なのに、あえてそれをせずに誠実さを貫くというのは、「強い信念」と「心の成熟」がなければ簡単にできることではありません。

不条理の中でこそ磨かれる精神

では、「強い信念」と「心の成熟」は、どうやって生まれるのでしょうか?

それには試練が必要です。大きな試練と真剣に向き合う時にこそ、心の成長が可能となるのです……もちろん、「不条理」はそれに該当する大きな試練です。

小説の中では、たくさんの登場人物がそれぞれの形で不条理と向き合っています。

例えば、新聞記者ランベールは自分の妻に会うために封鎖された都市からの脱出を画策します。 「愛するもののために生き、また死ぬ」と語る彼の姿勢もまた肯定されるべきものです。

しかし、結局彼は目の前にいる不条理に抗う人たちと行動を共にする道を選びました。

パヌルー神父は、罪のない人々が理由もなく死んでいく中で、神に救いを求めても何も変えられない現実に直面し苦悩します。

しかし最後は、自分の信仰に身を捧げ、医師の診察を拒み、神の手に自分の運命のすべてをゆだねる決断をし、死んでいきます。

不条理の中でどう生きるか?

不条理とどう向き合い、その中でどう生きていくのか?

── 結局、それは自分で決めるしかありません。自分自身と誠実に向き合えば、おのずと答えは導き出されるでしょう。

この物語はそのための多くのヒントを私たちに与えてくれます。
少し読みづらい所があるので、読書初心者にはあまり向いていないかもしれませんが、興味のある方はぜひ読んでみてください。

「ペスト」カミュ
「不条理」とどう向き合い、生きていけばよいのかを描いた小説。

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