サンクコスト、埋没費用の罠とは?

「ここまで頑張ってきたのに今さらやめるわけにはいかない!」そう思ったことありませんか?
でもそれ、「サンクコスト効果」と呼ばれる落とし穴にはまっているのかもしれません。

サンクコスト効果(サンクコストバイアス)とは、すでにお金や労力や時間を支払ってしまったという理由だけで損な取引に手を出し続けてしまう心理的傾向のこと。

ビジネスや投資の世界では、意思決定を歪める要因として知られています。 

有名な例としては、超音速旅客機コンコルドの商業的失敗があげられます。

1970頃、コンコルドという名の超音速旅客機の開発が進んでいました。
しかし、燃費が悪く、乗客が乗るスペースも少なかったため当初から採算が取れないとの見通しがありました。
しかし、それまでに投じた膨大な開発費をなんとか回収しようと計画を中止できずにズルズルと続けた結果、債務が数兆円にまで膨れ上がって結局は倒産してしまったというものです。 

合理的な経営判断をするなら、採算が取れないという見通しが立った時点で開発をストップするべきでした。そうすれば、そこまで債務を増やすこともありませんでした。

しかし、すでに数千億円もの資金を投下している以上、その資金が完全に無駄になってしまう撤退という判断をすることは簡単ではありません。

どうしてもサンクコストに惑わされて損失を増やしてしまうのが人間の心理というもののようです。

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目次

サンクコストとは?

サンクコストとは、すでに使ったお金・労力・時間のうち、今それをやめても戻ってこないもののことを指します。埋没費用とも呼びます。

そして、サンクコスト効果(サンクコストバイアス)とは、上記にも書いたように、すでにお金や労力や時間を支払ってしまった(サンクコスト)という理由だけで損な取引に手を出し続けてしまう心理的傾向のことを指します。

サンクコスト効果の例

ありがちなサンクコスト効果の例を紹介します。

つまならない映画

1,800円で鑑賞券を購入して映画を見始めたが、10分でつまらない映画だと気がついた場合、それでもほとんどの人は最後まで映画を見続けるという選択をします。
それはサンクコスト効果にやられてしまっているからです。

そこには「せっかくお金を払って見始めたんだから(それだけの価値は得なければならない)」という心理があります。
しかし、合理的な判断をするなら、すでに支払った1,800円は判断材料から除外しなければなりません。この1,800円とつまらない映画だと気がつくまでの10分間はすでに戻ってこないのでサンクコスト(埋没費用)となっているからです(これを判断基準に含めると合理的でない判断をしてしまいがち)。

したがって、本当は「せっかく1,800円払ったんだから」ではなく、「映画の残りの時間1時間50分(2時間映画の場合)をより有意義に使える選択肢はあるだろうか?」だけを考えなくてはなりません。そして、答えがYESならその時点で映画館を出るのが合理的な判断ということになります(つまらない映画ならその可能性は高くなるはずです)。

しかし、ほとんどの人は、すでにサンクコストとなった1,800円分の価値をそこから得るために、さらに1時間50分という時間までもつまらない映画に費やしてしまうのです。

紛失した鑑賞券

映画の鑑賞券を1,800円で購入したもののそれを紛失してしまった場合、もう一度鑑賞券を買い直すか、映画を見るのをやめるかという判断に迫られます。

この場合、紛失した鑑賞券1,800円はサンクコスト(埋没費用)になっているため、合理的に判断するなら判断材料に含めてはいけません。 あらためて純粋に「この映画は1,800円支払って見る価値があるか?」だけで判断しなくてはいけません。

しかし、多くの場合紛失した分の1,800円と新たに購入する分の1,800円を足して3,600円分の価値があるかどうかで判断しようとしてしまうのです。

そろそろ当たるはずのギャンブル

宝くじやパチンコなどでは、「これだけ使ったんだからそろそろ当たるはずだ」と考えてしまいがちです。しかし、そこまでに投資したお金はサンクコスト(埋没費用)なので、さらにお金をつぎ込むかどうかの判断材料にしてはいけません。

「ここまでつぎ込んだのだから、せめて元を取るまでやめられるか!」と熱くなって借金をしてまでギャンブルを続ける人がいますが、完全にサンクコスト効果にやられていると言わざるを得ません。

損したくない投資

100万円で買った株が80万円に下落した場合、その株を手放すかどうかを合理的に判断するなら「これから上がるか下がるか?」だけで判断しなければなりません。 しかし、多くの場合発生している20万円の含み損のことを考えて意思決定してしまいます。

合理的に考えれば上がる可能性は低いと考えていたとしても、「ここで売ったら20万円の損失が確定してしまう」と考えて保有を続けてしまうのです。 もちろんその結果がどうなるかはわかりませんが、多くの場合80万円に下がった株価はさらに下がり損失を増やしてしまいます。

諦められない夢

これまで夢を追いかけて多くのお金や時間や労力を費やしてきたので今さらやめられない、というのもよくあるケースです。

しかし、これまでに費やしてきたものは全てサンクコスト(埋没費用)なので、判断材料に含めてはいけません。合理的に考えるなら、純粋にこの先夢が叶うかどうかだけで決めるべきです。
もちろん、可能性が低くても諦められない夢もあるでしょう。ただし、「ここまで頑張ってきたんだから今更やめられない」という理由だけでそれを続けるのであれば、それはあまり良い選択ではありません。

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サンクコスト効果でさらに損失を増やす

ここまで見てきたように、私たちはサンクコスト効果によって、過去に自分が下した意思決定を正当化するために合理的でない選択をしてしまう。その結果、さらに多くのお金・労力・時間を支払うことになるというわけです。

私たちにはそんな心理的な傾向があるのです。

先ほどの例でいうと、つまらない映画をそのまま見続けるどうかの判断程度のことであれば、正直なところどちらでも良いわけです。間違った判断をしてもそれほど悪影響があるわけではありませんから。

しかし、人生を左右するような大きなことに関してはサンクコスト効果に注意しておく必要があります。間違った判断によって人生を大きく狂わせてしまうこともあります。

「今やめたら、これまで投じてきたものが無駄になる」。
そう感じたら、それはもう「サンクコスト効果」の罠にはまっているということです。

ちなみに、このサンクコストバイアス、子供にはほとんど見られない傾向なんだとか。だから「つまらない」とか「もうやめたい」なんていうことをすぐに言います。

その度に親から「ここまで頑張ったんだからもう少し頑張りなさい」などとたしなめられるのです。 そこまでに注ぎ込んだお金や労力や時間というものに固執するのは大人ばかりなのですね。

サンクコスト効果で歪んだ意思決定をしないためには?

サンクコスト効果で歪んだ意思決定をしないためには、「既に支払ったコストは回収できないので、将来の意思決定には反映させるべきでない」ということを肝に命じておく必要があります。

これは特に合理的な判断が求められるビジネスや投資においては鉄則のようなものだということを覚えておきましょう。


カテゴリ モチベーション理論
 タグ  脳科学

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