ラポールの形成
〜カウンセラーが行う人間関係構築法とは?

「ラポール」とは、フランス語で「橋をかける」という意味。

心理学用語では人と人との間の信頼関係のことを意味します。

二人の人間の間に信頼関係が構築された状態のことを、「ラポールが取れた」「ラポールが形成された」などと言います。

つまり、二人の間に「橋がかかった」というイメージですね。

カウンセリングやセラピーの現場において、ラポールはとても重要視されます。
なぜなら、そこではカウンセラーとクライアントの関係性が非常に重要だからです。

ラポールがしっかりと形成された関係性からでなければ、なかなかポジティブな成果が得られないのです。

考えてみれば当然のことです。
信頼のできない人に、心を開いて本音を話すことなどできません。

そんなわけで、ここではコーチでありカウンセラーでもある私が「ラポール」についてわかりやすく解説していきます。

スポンサーリンク

目次

ラポールの形成

ラポールはあらゆるコミュニケーションの前提であり土台です。

それは何も、カウンセリングやセラピーの場にとどまりません。
セールスやビジネスの場はもちろん、人と関わるあらゆる場面においてラポールは大切です。

周りを見渡してみてください。
優れたリーダーやセールスマンは、決まってラポール形成が上手なはずです。

その重要性を理解し実践しているのです。

彼らのような優れたコミュニケーターは意図的にラポールを形成するステップを踏みます。

(ポイントは”意図的に”というところです。ちゃんと意識して行うのです。)

ラポールという言葉を知っているかどうかは別にして、彼らは意図的に理想的な人間関係を形成していく術を心得ているのです。

ラポール形成の手法

具体的なラポール形成の手法には次のようなものがあります。

例えば、人は他人と自分との間に共通点を見つけた瞬間、安心感や信頼感を覚えます。

初対面の人との距離感を一気に縮める方法として「共通点探し」というミニゲームをするセミナーもあります。
これをやると一気に「場」が和み、その後のセミナーが活発になったりします。

また、「呼吸」「姿勢」「ジェスチャー」「話し方」などを相手に合わせていく、「ページング」という手法もラポール形成にはよく使われます。

これを自然に行うと、相手は「なんとなくこの人とは合うかも」と感じるものです。

もっとも、何といっても一番大事なのはオープンマインドでその人を心からの尊重することです。

自分のことを大切に扱い、本気で尊重してくれる人に対して嫌な気持ちを持つ人などいないでしょう。
まず自分から心を開かなくては、相手もそうしてはくれません。

何よりもコミュニケーターの心持ちが大事であり、それはその人が作り出す「雰囲気」として相手に伝わり、それがコミュニケーションに多大な影響を与えるのです。

ラポールなしのコミュニケーション

例えば、初めてカウンセリングを受けに行った先で「で、あなたの悩みは?」などといきなり仏頂面で聞かれたらどう感じるでしょう。

また、知り合ったばかりの保険外交員が「で、あなたや家族は保険入ってるの?」と聞いてきたらどう思うでしょう。

きっと警戒するはずです。

まだラポールが形成されていないのに、いきなり核心に迫るのは取扱いが雑で、相手のことを尊重していない態度と受け取れます。

もう少し例を挙げてみましょう。

街中でいきなり「一目惚れしました。付き合ってください」と言ってもOKをもらえることはまず無いでしょうし、職場の人間関係がギクシャクしているのもたいていラポールが形成されていないことが原因です。

スポンサーリンク

ラポールが形成される瞬間

「自殺防止センター」を立ち上げて、「死にたい」という人々の電話相談を受けている西原由記子さんは、次のような体験を語っています。

自殺を決意し電話をかけてきた人に対して、歳はいくつか、結婚しているのか、子供はいるかなど色々質問したくなるが、それは自分が聞きたいだけ。
そんなことその人に関係ない。
それより、その人の決意を受け止めようと「あなたの決心を尊重申し上げます」と声を震わせるほどの想いで伝えたことがあります。
すると、それまで噛み付くように話していた人が、「わかってくれますか」と態度をガラッと変えたんです。

……その瞬間、まさにラポールが形成されたと言えるでしょう。

一段深い場所

Mr.Childrenの「365日」という歌の中に次のような歌詞があります。

「昨日よりも深い場所で君と出逢いたい ── 」

結局、ラポールというのは目に見えない一段深い場所で信頼関係を結ぶということなのだと思います。

行動や言動、主義主張がいかなるものであったとしても、その奥にある”人としての存在”の部分を尊重する姿勢を持てるかどうか。

先ほど紹介した自殺志願者に対しては、それに合わせてグッと一歩踏み込まなければならないかもしれませんが、普段はそれほど力む必要はありません。
ほんのちょっと足を踏み出せばラポールは形成されます。

たいてい、それはちょっとした雑談です。

相手を気遣い、話を聞き、それを否定せず尊重する。

ただそれだけで、相手の心と自分の心の間に橋がかかりラポールは形成されるのです。

最後に

ほんのちょっとしたことですが、意識的にラポールが形成できるようになると人間関係が劇的に変わります。

まずは、目の前の人とのラポールを意識してみましょう。

ちゃんと橋は架かっているでしょうか?


カテゴリ モチベーション理論
 タグ  人間関係

このサイトは、生き方・働き方を模索する人のためのWEBマガジンです。月間300万pv。運営者は原宿に住むコーチ、ブロガー。
→もっと見る

Follow
Facebook
X
Instagram
メールマガジン